国立成育医療センター研究所
成育政策科学研究部 Department of Health Policy

平成20年度厚生労働科学研究(子ども家庭総合研究事業)分担研究報告書
「法制化後の小児慢性特定疾患治療研究事業の登録・管理・評価・情報提供に関する研究」

小児慢性特定疾患治療研究事業(慢性腎疾患、慢性呼吸器疾患、糖尿病、慢性消化器疾患)の非継続症例の経過に関する実態調査

分担研究者 加藤 忠明 国立成育医療センター研究所成育政策科学研究部長
研究協力者 原田 正平 国立成育医療センター研究所成育医療政策科学研究室長
         安藤 亜希 国立成育医療センター成育政策科学研究部共同研究員
         福田 清香 国立成育医療センター総合診療部レジデント
         掛江 直子 国立成育医療センター研究所成育保健政策科学研究室長
         顧 艶紅  国立成育医療センター成育政策科学研究部流動研究員
         佐藤 ゆき 国立成育医療センター成育政策科学研究部流動研究員
         竹原 健二 国立成育医療センター成育政策科学研究部リサーチレジデント
         藤本 純一郎 国立成育医療センター研究所副所長

研究要旨: 法制化後の平成17年度小児慢性特定疾患治療研究事業に登録されたが、18年度に非継続であった慢性腎疾患2,546人、慢性呼吸器疾患604人、糖尿病962人、慢性消化器疾患612人の経過を調査した。17年度に登録された医療機関に対して、20年度に質問紙調査を行い、各疾患群の回収率は62.0%、51.3%、68.2%、60.3%であった。非継続となった理由は、制度上の理由56.2%、家族の都合26.0%、経過が順調8.6%を合わせると90.8%であり、当該事業が医療費助成制度としてほぼ適正に運営されていることを示している。また、疾患名の変更は、当然予想されるネフローゼ症候群や腎炎、慢性腎不全等以外では少なく、電子データ上の多くの疾患名は正確なものと考えられる。慢性腎疾患、慢性呼吸器疾患、慢性消化器疾患での死亡症例の報告数は、人口動態統計での死亡数と近似していた。これらの疾患群は、今回の調査で非継続症例の経過を全国レベルで把握できたと考えられる。46人の死亡症例の報告があり、発症から死亡に至る経過が判明した。その経過を少しでも回避できるような医療、また生活指導が望まれる。例えば、詳細不明のまま急に亡くなった13歳以降の当該事業対象患児に対しては、自殺防止等へ対策が急務である。また、2型糖尿病児の経過は不明が多く、当該事業の対象基準等、改善が望まれる。今回調査できなかった疾患群に関しては、来年度同様の調査を行いたい。

見出し語:慢性腎疾患、慢性呼吸器疾患、糖尿病、慢性消化器疾患、非継続症例、死亡経過

A.研究目的
 小児慢性特定疾患治療研究事業(以下、小慢事業)は、平成10年度以降、医療意見書1)を申請書に添付させ、診断基準を明確にして小児慢性特定疾患(以下、小慢疾患)対象者を選定する方式に、全国的に統一され、17年度以降は法制化されている。
しかし、治癒、死亡等で受給資格がなくなり医療受診券が返還される場合、受給者の転帰(治癒、死亡、他都道府県市転出等を含む中止)を各実施主体において小慢事業台帳に記入することになっているが、そうしたデータの全国集計は行われていないのが現状である。そのため、申請書が提出されなくなった症例の経過が不明である。また、電子データによる厚生労働省への報告に不備が存在する可能性もある。そこで、厚生労働省に継続して報告されなかった症例、すなわち小慢事業での非継続症例の経過に関して、質問紙による実態調査を一部の疾患群に行った。小慢事業に登録された症例に関して、発病した後、登録中の経過の概要は医療意見書の電子データから把握できるので、その電子データの確認と共に、その後の経過を全国レベルで把握することを目的とした。
 一昨年度は、法制化前の15年度小慢事業に登録されたが16年度に非継続であった先天性代謝異常(一部慢性消化器疾患を含む)848人、神経・筋疾患357人の経過をパイロット的に全国レベルで調査した2〜4)。また、昨年度は、法制化後の17年度に登録されたが、18年度に登録されなかった非継続症例の経過に関して山梨県、長野市、三重県、愛媛県の全疾患群の患児618人を対象として調査し、返送数378人を得た5)。これらの結果を基に、今年度は小慢事業(慢性腎疾患、慢性呼吸器疾患、糖尿病、慢性消化器疾患)の非継続症例の経過に関する質問紙調査を全国レベルで行った。

B.対象と方法
 対象者は、17年度小慢事業登録時に研究の資料にすることに同意を得られた方で、17年度に登録されたが18年度に登録されなかった「慢性腎疾患」2,546人、「慢性呼吸器疾患」604人、「糖尿病」962人、「慢性消化器疾患」612人であった。
18年度小慢事業の医療意見書に関する厚生労働省への電子データによる報告は、全国99か所の実施主体のうち20年8月までに、87か所の実施主体から行われた。そのうち17年度に医療機関名が報告された79か所の実施主体の症例を対象とした。
個人情報保護のため氏名、住所、生年月日等は自動的に削除された電子データを用いた。小慢事業の電子データを年度ごとに順次入力すると、当該年度の前年度に登録されたが当該年度に登録されなかった症例を自動的に抽出する症例情報データベースシステムを用いて対象者を選定した6)。
 対象者に関する医療機関への調査内容は、「調査時点の症例の経過」、「死亡した症例は、死亡年月、死因と経過」、「調査時点で小慢事業への申請の有無」、「申請した場合は、申請疾患名、受給者番号、申請した実施主体」、「申請しなかった場合は、対象外となった理由」であった。
調査票は、医療機関宛に20年11月に発送し、 21年2月末までに返送された内容を集計解析した。そして、国立成育医療センターのサーバー内に構築された症例情報データベースシステムに入力・保存されている10〜18年度小慢事業の電子データと共に患児の経過をまとめた6)。

C.結果
返送数は、「慢性腎疾患」1578通(回収率62.0%)、「慢性呼吸器疾患」310通(同51.3%)、「糖尿病」656通(同68.2%)、「慢性消化器疾患」369通(同60.3%)であった。該当者なし等ほとんど無記入の無効回答は、各々、44通(その内、重複症例1通)、5通、17通、9通であり、有効回答例は、各々、1534人(有効回答率60.3%)、305人(同50.5%)、639人(同66.4%)、360人(同58.8%)であった。
4疾患群合わせた返送数は2913通(回収率61.7%)、有効回答例は2838人(有効回答率60.1%)であり、昨年度の調査での各々61.2%、58.3%より若干増加していた5)。

1,平成17年度小慢事業に登録された症例の経過
 17年度小慢事業に登録されたものの18年度に非継続となった症例の臨床経過に関する質問紙調査結果、及び18年度小慢事業に登録された継続症例の臨床経過に関する電子データの結果を表1(慢性腎疾患)、表2(慢性呼吸器疾患)、表3(糖尿病)、表4(慢性消化器疾患)に示す。
 各疾患群全体としての患児の経過を表1−1〜表4−1に、また、各疾患群における個々の疾患の患児の経過を表1−2〜表4−2に示す。表に載せた個々の疾患は、全国でおおむね50人以上登録された主な疾患である。

@慢性腎疾患の経過
 表1−1の慢性腎疾患児の経過は、全体としては「改善」と「不変」が多かった。そして、継続例と比べて非継続例は、「治癒」と「寛解」が多く、「再発」が少なかった。また、「死亡」例の報告が得られた。

表1−1 平成17年度小慢事業に登録された「慢性腎疾患」全体としての経過
経過 非継続症例 1)  継続症例 2) 
人数(人) (%) 人数(人) (%)
治癒 139 ( 9.1) 10 ( 0.2)
寛解 371 (24.2) 697 (11.6)
改善 329 (21.4) 1,783 (29.7)
不変 326 (21.2) 1,801 (30.0)
再発 64 ( 4.2) 852 (14.2)
悪化 44 ( 2.9) 246 ( 4.1)
死亡 7 ( 0.5) 3 ( 0.0)
不明 254 (16.5) 613 (10.2)
合計 1,534 (100) 6,005 (100)
1)平成17年度小慢事業に登録され、18年度に非継続となった症例(以下の表も同様)
2)平成17年度、18年度ともに小慢事業に登録された継続症例(以下の表も同様)

 各々の慢性腎疾患の経過に関して、表1−2に示す。表1−2(1)のネフローゼ症候群は、非継続例では「寛解」が、また継続例では「再発」が多かった。「半年間で3回以上再発した症例」等の対象基準が法制化に伴って設定されたためである。ただし、ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群は、その疾患名のみで対象であるため、継続例の経過は様々であった。
 表1−2(2)の遺伝性腎炎、多発性嚢胞腎、腎低形成、尿路の奇形等の先天性腎疾患は、非継続例、継続例とも経過は「不変」が多かった。
 表1−2(3)の紫斑病性腎炎、IgA腎症、メサンギウム増殖性腎炎、巣状糸球体硬化症、膜性増殖性糸球体腎炎、膜性腎症等の慢性腎炎の経過はおおむね、非継続例は「寛解」と「改善」が、また継続例は「改善」と「不変」が多かった。
 非継続例:継続例の人数は、紫斑病性腎炎は160人:437人であり、非継続例が比較的多く、巣状糸球体硬化症は28人:245人であり、ほとんどが継続例であった。また、非継続の治癒例は、前者には20.6%みられたが、後者は0%であった。
 その他の慢性腎疾患として、表1−2(4)の慢性腎盂腎炎、水腎症、腎血管性高血圧、 Bartter症候群、慢性腎不全の経過は、非継続例、継続例とも、おおむね「不変」が最も多く、次いで「改善」であった。

表1−2 平成17年度小慢事業に登録された「慢性腎疾患」個々の疾患の経過(1)
  経過   非継続症例 1)  継続症例 2)
人数(人) (%) 人数(人) (%)
  ネフローゼ症候群
治癒 23 ( 5.2) 3 ( 0.2)
寛解 176 (39.5) 394 (24.2)
改善 41 (9.2) 168 (10.3)
不変 50 (11.2) 143 ( 8.8)
再発 59 (13.2) 811 (49.8)
悪化 6 (1.3) 13 ( 0.8)
死亡 1 (0.2) 1 ( 0.1)
不明 90 (20.2) 97 ( 6.0)
合計 446 (100) 1,630 (100)
  ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群(再掲)
治癒 1 ( 3.3) 1 ( 0.9)
寛解 12 (40.0) 37 (33.0)
改善 5 (16.7) 20 (17.9)
不変 3 (10.0) 23 (20.5)
再発 2 ( 6.7) 2 (22.3)
悪化 2 ( 6.7) 2 ( 1.8)
死亡 0 ( 0.0) 0 ( 0.0)
不明 5 (16.7) 4 ( 3.6)
合計 30 (100) 112 (100)

表1−2 平成17年度小慢事業に登録された「慢性腎疾患」個々の疾患の経過(2)
  経過   非継続症例 1)  継続症例 2) 
 人数(人)    (%)    人数(人)    (%)  
  遺伝性腎炎
治癒 0 ( 0.0) 0 ( 0.0)
寛解 1 ( 3.6) 2 ( 1.4)
改善 1 ( 3.6) 16 (11.4)
不変 15 (53.6) 92 (65.7)
再発 0 ( 0.0) 0 ( 0.0)
悪化 5 (17.9) 22 (15.7)
死亡 0 ( 0.0) 0 ( 0.0)
不明 6 (21.4) 8 ( 5.7)
合計 28 (100) 140 (100)
  多発性嚢胞腎
治癒 0 ( 0.0) 0 ( 0.0)
寛解 1 ( 5.6) 0 ( 0.0)
改善 1 ( 5.6) 6 (10.9)
不変 15 (83.3) 34 (61.8)
再発 0 ( 0.0) 0 ( 0.0)
悪化 1 ( 5.6) 11 (20.0)
死亡 0 ( 0.0) 0 ( 0.0)
不明 0 ( 0.0) 4 ( 7.3)
合計 18 (100) 55 (100)
  腎低形成
治癒 1 ( 4.3) 0 ( 0.0)
寛解 1 ( 4.3) 2 ( 1.6)
改善 4 (17.4) 14 (11.3)
不変 10 (43.5) 75 (60.5)
再発 0 ( 0.0) 0 ( 0.0)
悪化 6 (26.1) 25 (20.2)
死亡 0 ( 0.0) 0 ( 0.0)
不明 1 ( 4.3) 8 ( 6.5)
合計 23 (100) 124 (100)
  尿路の奇形等
治癒 2 (13.3) 1 ( 1.6)
寛解 4 (26.7) 3 ( 4.7)
改善 2 (13.3) 15 (23.4)
不変 4 (26.7) 29 (45.3)
再発 0 ( 0.0) 0 ( 0.0)
悪化 1 ( 6.7) 3 ( 4.7)
死亡 0 ( 0.0) 0 ( 0.0)
不明 2 (13.3) 13 (20.3)
合計 15 (100) 64 (100)

表1−2 平成17年度小慢事業に登録された「慢性腎疾患」個々の疾患の経過(3)
  経過   非継続症例 1)  継続症例 2) 
 人数(人)    (%)    人数(人)    (%)  
  紫斑病性腎炎
治癒 33 (20.6) 1 ( 0.2)
寛解 48 (30.0) 25 ( 5.7)
改善 36 (22.5) 246 (56.3)
不変 24 (15.0) 125 (28.6)
再発 0 ( 0.0) 7 ( 1.6)
悪化 1 ( 0.6) 7 ( 1.6)
死亡 0 ( 0.0) 0 ( 0.0)
不明 18 (11.3) 26 ( 5.9)
合計 160 (100) 437 (100)
  IgA腎症
治癒 30 (12.0) 1 ( 0.1)
寛解 67 (26.9) 114 ( 9.7)
改善 74 (29.7) 657 (56.1)
不変 34 (13.7) 319 (27.2)
再発 2 (0.8) 4 ( 0.3)
悪化 2 (0.8) 21 ( 1.8)
死亡 1 (0.4) 0 ( 0.0)
不明 39 (15.7) 56 ( 4.8)
合計 249 (100) 1172 (100)
  メサンギウム増殖性腎炎
治癒 2 ( 6.3) 0 ( 0.0)
寛解 6 (18.8) 17 (11.7)
改善 7 (21.9) 63 (43.4)
不変 9 (28.1) 54 (37.2)
再発 0 ( 0.0) 1 ( 0.7)
悪化 1 ( 3.1) 5 ( 3.4)
死亡 0 ( 0.0) 0 ( 0.0)
不明 7 (21.9) 5 ( 3.4)
合計 32 (100) 145 (100)
  巣状糸球体硬化症
治癒 0 ( 0.0) 0 ( 0.0)
寛解 6 (21.4) 40 (16.3)
改善 8 (28.6) 35 (14.3)
不変 4 (14.3) 105 (42.9)
再発 1 ( 3.6) 19 ( 7.8)
悪化 3 (10.7) 23 ( 9.4)
死亡 0 ( 0.0) 1 ( 0.4)
不明 6 (21.4) 22 ( 9.0)
合計 28 (100) 245 (100)
  膜性増殖性糸球体腎炎
治癒 1 ( 3.3) 0 ( 0.0)
寛解 8 (26.7) 23 (11.5)
改善 12 (40.0) 87 (43.5)
不変 6 (20.0) 75 (37.5)
再発 0 ( 0.0) 1 ( 0.5)
悪化 0 ( 0.0) 4 ( 2.0)
死亡 0 ( 0.0) 0 ( 0.0)
不明 3 ( 10.0) 10 ( 5.0)
合計 30 (100) 200 (100)
  膜性腎症
治癒 9 ( 9.7) 1 ( 0.3)
寛解 17 (18.3) 29 ( 8.5)
改善 25 (26.9) 142 (41.4)
不変 15 (16.1) 134 (39.1)
再発 0 ( 0.0) 1 ( 0.3)
悪化 1 ( 1.1) 11 ( 3.2)
死亡 0 ( 0.0) 0 ( 0.0)
不明 26 (28.0) 25 ( 7.3)
合計 93 (100) 343 (100)

表1−2 平成17年度小慢事業に登録された「慢性腎疾患」個々の疾患の経過(4)
  経過   非継続症例 1)  継続症例 2) 
 人数(人)    (%)    人数(人)    (%)  
  慢性腎盂腎炎
治癒 4 ( 8.2) 0 ( 0.0)
寛解 4 ( 8.2) 2 ( 1.9)
改善 16 (32.7) 23 (21.7)
不変 18 (36.7) 62 (58.5)
再発 0 ( 0.0) 0 ( 0.0)
悪化 1 ( 2.0) 6 ( 5.7)
死亡 0 ( 0.0) 0 ( 0.0)
不明 6 ( 12.2) 13 (12.3)
合計 49 (100) 106 (100)
  水腎症
治癒 20 (11.3) 1 ( 0.3)
寛解 17 ( 9.6) 20 ( 5.3)
改善 62 (35.0) 98 (26.2)
不変 57 (32.2) 198 (52.9)
再発 0 ( 0.0) 0 ( 0.0)
悪化 2 ( 1.3) 19 ( 5.1)
死亡 0 ( 0.0) 0 ( 0.0)
不明 19 (10.7) 38 (10.2)
合計 177 (100) 374 (100)
  腎血管性高血圧
治癒 2 (20.0) 1 ( 1.5)
寛解 1 (10.0) 2 ( 3.1)
改善 1 (10.0) 24 (36.9)
不変 3 (30.0) 31 (47.7)
再発 0 ( 0.0) 0 ( 0.0)
悪化 1 (10.0) 2 ( 3.1)
死亡 1 ( 0.0) 0 ( 0.0)
不明 1 (10.0) 5 ( 7.7)
合計 10 (100) 65 (100)
  Bartter症候群
治癒 1 (14.3) 0 ( 0.0)
寛解 0 ( 0.0) 2 ( 3.4)
改善 1 (14.3) 24 (41.4)
不変 5 (71.4) 26 (44.8)
再発 0 ( 0.0) 1 ( 1.7)
悪化 0 ( 0.0) 1 ( 1.7)
死亡 0 ( 0.0) 0 ( 0.0)
不明 0 ( 0.0) 4 ( 6.9)
合計 7 (100) 58 (100)
  慢性腎不全
治癒 1 ( 2.4) 0 ( 0.0)
寛解 0 ( 0.0) 7 ( 3.0)
改善 12 (29.3) 26 (11.1)
不変 15 (36.6) 112 (47.7)
再発 1 ( 2.4) 0 ( 0.0)
悪化 3 ( 7.3) 36 (15.3)
死亡 3 ( 7.3) 0 ( 0.0)
不明 6 (14.6) 54 (23.0)
合計 41 (100) 235 (100)
  腎尿細管性アシドーシス
治癒 0 ( 0.0) 0 ( 0.0)
寛解 1 (16.7) 3 ( 5.5)
改善 0 ( 0.0) 27 (49.1)
不変 3 (50.0) 16 (29.1)
再発 0 ( 0.0) 0 ( 0.0)
悪化 1 (16.7) 5 ( 9.1)
死亡 0 ( 0.0) 0 ( 0.0)
不明 1 (16.7) 4 ( 7.3)
合計 6 (100) 55 (100)

A慢性呼吸器疾患の経過
 表2−1の慢性呼吸器疾患児の経過は、全体としては「不変」が多かった。継続例と比べて非継続例は、「軽快」「寛解」「治癒」が多く、「死亡」例の報告が得られた。
 表2−2の各々の慢性呼吸器疾患の経過に関して、気管支喘息と慢性肺疾患は、非継続例では「軽快」が、また継続例では「不変」が多かった。
 非継続例:継続例の人数は、対象基準の厳しくなった気管支喘息は210人:397人で、非継続例が比較的多く、先天性中枢性低換気症候群は6人:60人であり、ほとんどが継続例であった。
 おおむね先天性疾患である気管狭窄と先天性中枢性低換気症候群は、非継続例、継続例とも経過は「不変」が多かった。

2−1 平成17年度小慢事業に登録された「慢性呼吸器疾患」全体としての経過
  経過   非継続症例 1)  継続症例 2) 
 人数(人)    (%)    人数(人)    (%)  
治癒 14 ( 4.6) 0 ( 0.0)
寛解 30 ( 9.8) 21 ( 2.1)
軽快 104 (34.1) 174 (17.0)
不変 63 (20.7) 507 (49.6)
再発 2 ( 0.7) 20 ( 2.0)
悪化 0 ( 0.0) 42 ( 4.1)
死亡 21 ( 6.9) 0 ( 0.0)
不明 71 (23.3) 258 (25.2)
合計 305 (100) 1022 (100)

表2−2 平成17年度小慢事業に登録された「慢性呼吸器疾患」個々の疾患の経過
  経過   非継続症例 1)  継続症例 2) 
 人数(人)    (%)    人数(人)    (%)  
気管支喘息
治癒 6 ( 2.9) 0 ( 0.0)
寛解 25 (11.9) 8 ( 2.0)
軽快 80 (38.1) 89 (22.4)
不変 34 (16.2) 200 (50.4)
再発 2 ( 1.0) 17 ( 4.3)
悪化 0 ( 0.0) 27 ( 6.8)
死亡 3 ( 1.4) 0 ( 0.0)
不明 60 (28.6) 56 (14.1)
合計 210 (100) 397 (100)
  慢性肺疾患
治癒 3 ( 6.7) 0 ( 0.0)
寛解 1 ( 2.2) 3 ( 1.4)
軽快 17 (37.8) 34 (15.3)
不変 8 (17.8) 116 (52.3)
再発 0 ( 0.0) 3 ( 1.4)
悪化 0 ( 0.0) 8 ( 3.6)
死亡 12 (26.7) 0 ( 0.0)
不明 4 ( 8.9) 58 (26.1)
合計 45 (100) 222 (100)
  気管狭窄
治癒 4 (14.8) 0 ( 0.0)
寛解 1 ( 3.7) 4 ( 2.1)
軽快 4 (14.8) 22 (11.8)
不変 9 (33.3) 92 (49.2)
再発 0 ( 0.0) 0 ( 0.0)
悪化 0 ( 0.0) 2 ( 1.1)
死亡 5 (18.5) 0 ( 0.0)
不明 4 (14.8) 67 (35.8)
合計 27 (100) 187 (100)
  先天性中枢性低換気症候群
治癒 0 ( 0.0) 0 ( 0.0)
寛解 0 ( 0.0) 0 ( 0.0)
軽快 0 ( 0.0) 0 ( 0.0)
不変 3 (50.0) 41 (68.3)
再発 0 ( 0.0) 0 ( 0.0)
悪化 0 ( 0.0) 1 ( 1.7)
死亡 1 (16.7) 0 ( 0.0)
不明 2 (33.3) 18 (30.0)
合計 6 (100) 60 (100)

B糖尿病の経過
 表3−1の糖尿病児の経過は、全体的には「改善」や「不変」が多かったが、非継続例では「不明」が比較的多かった。
 表3−2の型別の糖尿病の経過では他の疾患と比べて、1型糖尿病はインスリン療法の継続を原則とするため、継続例3884人の割に非継続例439人は少なかった。2型糖尿病とインスリン抵抗性糖尿病は「食事療法、生活指導のみの症例は対象外」とされたため、非継続例での「不明」の割合が比較的多かった。

表3−1 平成17年度小慢事業に登録された「糖尿病」全体としての経過
  経過   非継続症例 1)  継続症例 2) 
 人数(人)    (%)    人数(人)    (%)  
治癒 2 ( 0.3) 6 ( 0.1)
寛解 14 ( 2.2) 94 ( 1.9)
改善 153 (23.9) 2447 (50.3)
不変 239 (37.4) 1671 (34.4)
再燃 2 ( 0.3) 20 ( 0.4)
悪化 16 ( 2.5) 143 ( 2.9)
死亡 1 ( 0.2) 0 ( 0.0)
不明 212 (33.3) 483 ( 9.9)
合計 639 (100) 4864 (100)

表3−2 平成17年度小慢事業に登録された「糖尿病」個々の疾患の経過
  経過   非継続症例 1)  継続症例 2) 
 人数(人)    (%)    人数(人)    (%)  
  1型糖尿病
治癒 0 ( 0.0) 6 ( 0.2)
寛解 4 ( 0.9) 84 ( 2.2)
改善 105 (23.9) 2,073 (53.4)
不変 200 (45.6) 1,391 (35.8)
再燃 0 ( 0.0) 5 ( 0.1)
悪化 7 ( 1.6) 63 ( 1.6)
死亡 1 ( 0.2) 0 ( 0.0)
不明 122 (27.8) 262 ( 6.7)
合計 439 (100) 3,884 (100)
  2型糖尿病
治癒 2 ( 1.2) 0 ( 0.0)
寛解 10 ( 5.8) 9 ( 1.2)
改善 40 (23.3) 337 (44.1)
不変 32 (18.6) 248 (32.5)
再燃 2 ( 1.2) 15 ( 2.0)
悪化 9 ( 5.2) 76 ( 9.9)
死亡 0 ( 0.0) 0 ( 0.0)
不明 77 (44.8) 79 (10.3)
合計 172 (100) 764 (100)
  インスリン抵抗性糖尿病
治癒 0 ( 0.0) 0 ( 0.0)
寛解 0 ( 0.0) 0 ( 0.0)
改善 2 (50.0) 5 (38.5)
不変 0 ( 0.0) 5 (38.5)
再燃 0 ( 0.0) 0 ( 0.0)
悪化 0 ( 0.0) 1 ( 7.7)
死亡 0 ( 0.0) 0 ( 0.0)
不明 2 (50.0) 2 (15.4)
合計 4 (100) 13 (100)

C慢性消化器疾患の経過
 表4−1の慢性消化器疾患児の経過は、全体的には「改善」「寛解」「不変」が多かったが、非継続例では、「治癒」や「死亡」の報告が比較的多く得られた。
 表4−2の各々の慢性消化器疾患の経過に関して、「治癒」は、胆道閉鎖症にはほとんどみられなかったが、先天性胆道拡張症の非継続例には比較的多くみられた。

表4−1 平成17年度小慢事業に登録された「慢性消化器疾患」全体としての経過
  経過   非継続症例 1)  継続症例 2) 
 人数(人)    (%)    人数(人)    (%)  
治癒 26 ( 7.2) 14 ( 0.6)
寛解 63 (17.5) 343 (15.8)
改善 100 (27.8) 1,116 (51.4)
不変 99 (27.5) 33 (15.3)
再燃 2 ( 0.6) 19 ( 0.9)
悪化 9 ( 2.5) 46 ( 2.1)
死亡 17 ( 4.7) 0 ( 0.0)
不明 44 (12.2) 301 (13.9)
合計 360 (100) 2,170 (100)

表4−2 平成17年度小慢事業に登録された「慢性消化器疾患」個々の疾患の経過
  経過   非継続症例 1)  継続症例 2) 
 人数(人)    (%)    人数(人)    (%)  
  胆道閉鎖症
治癒 4 ( 1.6) 9 ( 0.5)
寛解 30 (12.1) 274 (16.4)
改善 76 (30.6) 894 (53.4)
不変 82 (33.1) 254 (15.2)
再燃 2 ( 0.8) 10 ( 0.6)
悪化 9 ( 3.6) 37 ( 2.2)
死亡 14 ( 5.6) 0 ( 0.0)
不明 31 (12.5) 197 (11.8)
合計 248 (100) 1,675 (100)
  先天性胆道拡張症
治癒 22 (25.9) 4 ( 1.4)
寛解 28 (32.9) 64 (22.4)
改善 17 (20.0) 164 (57.3)
不変 8 ( 9.4) 16 ( 5.6)
再燃 0 ( 0.0) 4 ( 1.4)
悪化 0 ( 0.0) 1 ( 0.3)
死亡 0 ( 0.0) 0 ( 0.0)
不明 10 (11.8) 33 (11.5)
合計 85 (100) 286 (100)

2,死亡症例の発症から死亡までの経過
 「慢性腎疾患」、「慢性呼吸器疾患」、及び「慢性消化器疾患」の死亡症例に関して、疾患名と死亡に至る経過を表5、表6、及び表7に示す。
 「糖尿病」の死亡症例は、17歳で発病した1型糖尿病の男児のみであり、HbA1cが12.3%と高値であったが、転院したため死因は不明であった。
 死亡症例の報告は、46人中多い順に、胆道閉鎖症14人、慢性肺疾患12人、気管狭窄5人、慢性腎不全と気管支喘息が各々3人であった。

表5 「慢性腎疾患」の死亡7症例の経過
最終登録時疾患名
死亡者数/
有効回答者数
死亡時の年齢と性別:発症から死亡に至る経過
1〜3) 慢性腎不全
 3/41人
1) 2歳男児:新生児期に発症、血清総蛋白3.6g/dl、アルブミン2.0g/dl、クレアチニン4.6mg/dl、アルブミン製剤投与、透析など実施するも慢性腎不全にて死亡
2) 15歳女児:新生児期に発症、慢性間質性腎炎と登録されていたが、14歳時に慢性腎不全、学校生活管理指導表D、透析治療中経過は不変であったが、自宅にて心肺停止で発見、心肺停止の原因は不明
3) 17歳女児:7歳時に発症、13歳新規登録時慢性腎不全、クレアチニン9.2mg/dl透析治療中経過は不変、学校生活管理指導表A、腹膜炎から敗血症にて死亡
4) 萎縮腎
 1/7人
4) 13歳男児:新生児期に発症、クレアチニン3.1mg/dl、透析未実施、学校生活管理指導表Dで経過は不変であったが、突然死
5) 腎血管性高血圧
 1/10人
5) 13歳女児:10歳時に発症、血圧180/136、クレアチニン6.6mg/dl、学校生活管理指導表A、慢性腎不全進行、13歳の6月から乏尿・肺水腫、9月心肺停止
6) IgA腎症
 1/249人
6) 14歳女児:12歳時に発症、クレアチニン0.7mg/dl、学校生活管理指導表Dで経過は改善していたが、急性心筋炎(疑)にて死亡
7) ネフローゼ症候群
 1/446人
7) 20歳男児: 4歳時に発症、21回再発、血清総蛋白4.4g/dl、アルブミン1.8g/dl、ステロイド薬・免疫抑制薬にて治療中であったが、自殺にて死亡

@慢性腎疾患の死亡症例の経過
 表5によれば、非継続の慢性腎不全、萎縮腎、腎血管性高血圧の有効回答例58人中、5人(8.6%)が亡くなっていた。1)、3)、5)等の症例は、クレアチニン高値で腎機能障害が高度となり、透析等各種の治療を行いながら亡くなっていた。
 しかし、7)の自殺の他、2)、4)、6)の症例は、学校生活管理指導表Dで強い運動のみ制限されていたものの、詳細不明のまま急に亡くなっていた。

A慢性呼吸器疾患の死亡症例の経過
 表6の1〜4)は慢性肺疾患にて呼吸・循環不全により、また、12〜13)は気管支喘息を合併して、そして5〜7)は他の合併症により亡くなった症例である。
表6によれば、最終登録時の疾患名が慢性肺疾患、気管狭窄、先天性中枢性低換気症候群の非継続の有効回答例78人中、18人(23.1%)が亡くなっていた。そのうち、3)、4)は状態が急変し、また、10)、20)は詳細不明のまま急に亡くなっていた。

B慢性消化器疾患の死亡症例の経過
 表7の1〜6)は胆道閉鎖症にて肝不全により乳幼児期に、また、8〜10)は肝移植後に、そして、11〜14)はいろいろな経過をたどりながら15歳以降に亡くなった症例である。
表7によれば、非継続の有効回答例の胆道閉鎖症248人中14人(5.6%)、進行性家族性胆汁うっ滞症と肝硬変9人中3人(33.3%)が亡くなっていた。

表6 「慢性呼吸器疾患」の死亡21症例の経過
最終登録時疾患名
死亡者数/
有効回答者数
死亡時の年齢と性別:発症から死亡に至る経過
1〜12) 慢性肺疾患
 12/45人
1) 1歳男児:新生児期に発症、長期入院、捜管して酸素療法を行い経過は不変であったが、呼吸不全にて死亡
2) 1歳男児:3か月時に発症、酸素療法により経過は不変であったが、呼吸不全にて死亡
3) 1歳男児:新生児期に発症、人工呼吸管理、薬物療法により経過は軽快していたが、慢性肺疾患が急性増悪し、循環不全にて死亡
4) 2歳女児:新生児期に発症、酸素療法により経過は不変であったが、急速な経過で呼吸不全が悪化し、1日で死亡
5) 1歳男児:新生児期に発症、気管切開による酸素療法を行っていたが、壊死性腸炎を契機に敗血症・DICを発症、気管出血を併発し死亡
6) 3歳男児:新生児期に発症、気管切開による酸素療法を行い経過は不変であったが、肺炎にて死亡
7) 10歳女児:新生児期に発症、気管切開による酸素療法を行っていたが、成人型呼吸窮迫症候群・肺高血圧症を合併して死亡
8) 4歳男児:新生児期に発症、気管切開による人工呼吸管理を行い経過は不変であったが死亡、死因の記載なし
ただし、
9〜11) は発症年齢が高く、診断名等詳細は不明
9) 7歳女児:1歳5か月時に発症、気管切開による酸素療法を行っていたが
肺炎を契機とした心肺停止蘇生後、低酸素脳症に至り、3か月で死亡
10) 14歳男児:6歳時に発症、酸素療法による人工呼吸管理を行い、経過は不変であったが、自宅で突然死
11) 18歳男児:15歳時に発症、人工呼吸管理、薬物療法等を行っていたが、呼吸不全により死亡
12、13) は
慢性肺疾患+気管支喘息
12) 1歳男児:気管支喘息が5か月時に発症、重症持続型2にて長期入院、登録時の経過は軽快であったが、呼吸不全にて死亡
13) 7歳女児:Wilson-Mikity症候群から慢性肺疾患、3歳時に気管支喘息発症、重症持続型2、肺性心による呼吸不全にて死亡
13〜15)気管支喘息
 3/210人
14) 5歳男児:1か月時に発症、大発作が半年に3回以上あり、長期入院、酸素療法を行っていたが、呼吸不全にて死亡
15) 18歳男児:2歳時に発症、重症持続型1、ステロイド依存例、酸素療法による呼吸管理を行っていたが、重症僧帽弁逆流による心不全にて死亡
16〜20) 気管狭窄
 5/27人
16) 4か月女児:1か月時に発症、気管切開管理を行い、経過は不変であったが、先天性気管狭窄症による呼吸障害にて死亡
17) 1歳女児:3か月時に発症、捜管による酸素療法、中心静脈栄養を行っていたが、肺高血圧症から呼吸不全、心不全にて死亡
18) 1歳女児:新生児期に発症、気管切開による酸素療法を行っていたが、先天性彎曲肢異形成症による僧帽弁閉鎖不全にて死亡
19) 2歳男児:新生児期に発症、酸素療法による人工呼吸管理を行い経過は不変であったが、真菌感染症による敗血症性ショックにて死亡
20) 2歳女児:新生児期に発症、気管切開による酸素療法を行い経過は不変であったが死亡、死因は不明
21) 先天性中枢性低換気症候群
 1/6人
21) 15歳男児:1か月時に発症、14歳時に肺炎併発し、長期入院して気管切開による酸素療法を行ったが、呼吸不全から多臓器不全となり死亡

表7 「慢性消化器疾患」の死亡17症例の経過
最終登録時疾患名
死亡者数/
有効回答者数
死亡時の年齢と性別:発症から死亡に至る経過
1〜14) 胆道閉鎖症
 14/248人
1) 5か月男児:新生児期に発症、術後、d-Bil4.8、GOT176、肝不全にて死亡
2) 6か月男児:2か月時に発症、術後、d-Bil 4.7、GOT196、肝不全にて死亡
3) 11か月女児:新生児期に発症、手術予定なし、d-Bil 5.5、GOT 705、肝不全にて死亡
4) 11か月女児:新生児期に発症、8か月登録時体重6.2kg、d-Bil 5.5、GOT705、中心静脈栄養で手術予定なく経過悪化し、肝不全にて死亡
5) 1歳女児:2か月時に発症、術後、d-Bil 5.6、GOT 297、肝不全・高度黄疸・消化管出血を併発して死亡
6) 6歳女児:新生児期に発症、術後、d-Bil 6.0、GOT 215、肝不全にて死亡
7) 6か月女児:1か月時に発症、術後気管切開管理、d-Bil 6.2、GOT 129、経過が悪化し頭蓋内出血にて死亡
8) 1歳女児:新生児期に発症、10か月時に肝移植、GOT 316、術後5か月で CMV感染症にて死亡
9) 7歳男児:新生児期に発症、未就学、体重増加不良(6歳時体重14.5kg、身長106cm)、d-Bil 11.0、GOT 86、中心静脈栄養、7歳時に肝移植移植2か月後に肝不全にて死亡
10) 14歳女児:新生児期に発症、特別支援学級に就学、中心静脈栄養、肝移植術後1か月で死亡
11) 15歳女児:新生児期に発症、通常学級に就学、経過は改善していたが、胆管炎にて死亡
12) 17歳女児:新生児期に発症、術後、13歳まで通常学級、その後特別支援学級に就学、d-Bil 10.1、GOT 36、経過は不変であったが、肝不全・肺高血圧症にて死亡
13) 18歳男児:新生児期に発症、成長障害(17歳時の体重27.5kg、身長140cm)、骨変形あり、特別支援学級に就学、d-Bil 2.3、GOT 51、経過は不変であったが、肺塞栓症にて死亡
14) 19歳女児:通常学級に就学、経過と死因は不明
15、16) 進行性家族性胆汁うっ滞症
 2/5人
15) 7か月男児:1か月時に発症、7か月時に登録、d-Bil 25.6、GOT 328、手術予定あるも経過悪化し、肝不全にて死亡
16) 13歳男児:2か月時に発症、術後人工肛門、特別支援学級に就学、12歳登録時体重23.5kg、d-Bil 6.5、GOT 111、肝不全にて死亡
17) 肝硬変
 1/4人
17) 1歳女児:11か月時に発症、1歳1か月時体重7.5kg、d-Bil 8.5、GOT 466、捜管して中心静脈栄養を行っていたが、肝不全にて死亡

3,18年度非継続であったものの、20年度調査時点で小慢事業に申請していた症例
 平成18年度小慢事業として厚生労働省へ報告された電子データでは非継続とされたものの、20年度小慢事業には申請されていた症例が、慢性腎疾患351人(有効回答者の22.9%)、慢性呼吸器疾患42人(同13.8%)、糖尿病180人(同28.2%)、慢性消化器疾患170人(同47.2%)いた。
 それらの中で17年度小慢事業と異なる疾患名で申請していた症例(17年度の疾患名→20年度調査時の回答)は以下の通りである。各種の合併症の記載例も見られたが、その記載は省略する。
 慢性腎疾患では、ネフローゼ症候群→巣状糸球体硬化症6人、ネフローゼ症候群→IgM腎症・ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群各々2人、ネフローゼ症候群→全身性エリテマトーデス・慢性糸球体腎炎・慢性膜性増殖性糸球体腎炎各々1人、水腎症→尿路閉塞性腎機能障害1人、Bartter症候群→Gitelman症候群1人、IgA腎症・膜性増殖性糸球体腎炎・巣状糸球体硬化症→ネフローゼ症候群各々2人、メサンギウム増殖性腎炎→ネフローゼ症候群1人、Alport症候群→Bartter症候群1人、慢性糸球体腎炎→IgA腎症1人、紫斑病性腎炎・急速進行性糸球体腎炎・IgA腎症・慢性糸球体腎炎→メサンギウム増殖性腎炎各々1人、多発性嚢胞腎→萎縮腎1人、IgA腎症→遺伝性腎炎2人、IgA腎症→紫斑病性腎炎1人、紫斑病性腎炎→慢性膜性糸球体腎炎・若年性関節リウマチ各々1人、慢性腎不全→移植腎1人、水尿管症・多発性嚢胞腎→腎血管性高血圧症各々1人、慢性腎盂腎炎→低/異型性腎・尿路奇形による腎機能障害各々1人、腎静脈血栓・メサンギウム増殖性腎炎→膜性腎症各々1人、Alport症候群・Oligomeganephronia・慢性腎盂腎炎→慢性糸球体腎炎各々1人、多発性嚢胞腎→慢性腎不全2人、ネフローゼ症候群・腎低形成・萎縮腎→慢性腎不全各々1人であった。ネフローゼ症候群や腎炎との診断から病理診断名になったり、また、腎機能障害が進行して慢性腎不全等になったりする記載が比較的多かった。疾患名が全く異なる場合は、その旨記載されていた。
 慢性呼吸器疾患では、慢性肺疾患・気管狭窄→気管支喘息各々1人、気管狭窄→喉頭気管食道裂1人、気管支喘息→成長ホルモン分泌不全性低身長症1人、肺ヘモジデローシス・気管支喘息・気管狭窄→慢性肺疾患各々1人であった。
 糖尿病では、2型糖尿病・インスリン抵抗性糖尿病→1型糖尿病各々2人、糖尿病・MODY1による糖尿病→1型糖尿病各々1人のみであった。
 慢性消化器疾患では、胆道閉鎖症→先天性胆道拡張症2人、ジルベール症候群→先天性胆道拡張症・胆道閉鎖症各々1人、先天性胆道拡張症→先天性膵管胆道合流異常1人のみであった。
 受給者番号を17年度小慢事業の電子データと比較すると、慢性腎疾患では、一致症例244人、不一致70人、不明37人であった。不一致と不明の107人中、実施主体番号は47人が同じで、23人が異なり、37人が不明であった。
 慢性呼吸器疾患では、一致症例29人、不一致9人、不明4人であった。不一致と不明の 13人は全員、同じ実施主体番号であった。
 糖尿病では、一致症例148人、不一致29人、不明3人であった。不一致と不明の32人中、実施主体番号は28人が同じで、3人が異なり、1人が不明であった。
 慢性消化器疾患では、一致症例110人、不一致54人、不明6人であった。不一致と不明の60人中、実施主体番号は42人が同じで、 18人が異なっていた。

4,小慢事業に申請しなかった理由
 現場でも小慢事業に継続申請しなかった「慢性腎疾患」は、死亡症例7人を除き1017人で、その理由が記載されていたのは1000人であった。その内訳は、年齢が対象外:165人、疾患の対象基準外:413人、転院:160人、転科:4人、治療を中断:125人(治癒18人、寛解50人、改善28人、不変6人、再燃2人、経過が不明21人)、他の医療費助成制度を利用:37人、未受診:38人、治癒:24人、寛解継続中:5人、移植後経過が順調:5人、逆流防止術後安定:2人、家族の希望11人、通院頻度が少なく損する4人、当院での診察不可:3人、研究利用に非同意:2人、申請し忘れ1人、海外居住:1人であった。
 継続申請しなかった「慢性呼吸器疾患」は、死亡症例21人を除き226人で、その理由が記載されていたのは217人であった。その内訳は、年齢が対象外:6人、疾患の対象基準外:131人、転院:31人、治療を中断:17人(治癒2人、寛解2人、改善6人、不変1人、経過が不明6人)、他の医療費助成制度を利用:8人、未受診:15人、経過が良好:2人、家族の希望:4人、通院頻度が少なく損する:2人、訪問診療中止:1人であった。
 継続申請しなかった「糖尿病」は、死亡症例1人を除き421人で、その理由が記載されていたのは416人であった。その内訳は、年齢が対象外:175人、疾患の対象基準外:20人、転院:141人、転科:2人、治療を中断:25人(寛解2人、改善3人、不変2人、経過が不明18人)、他の医療費助成制度を利用: 14人、未受診:26人、家族の希望:5人、通院頻度が少なく損する:1人、申請し忘れ:2人、海外居住:2人、糖原病と誤記・申請中・肝移植後:各々1人であった。
 継続申請しなかった「慢性消化器疾患」は、死亡症例17人を除き146人で、その理由が記載されていたのは131人であった。その内訳は、年齢が対象外:32人、疾患の対象基準外:50人、転院:30人、転科1人、治療を中断:6人(改善2人、経過が不明4人)、他の医療費助成制度を利用:5人、未受診:4人、家族の希望3人であった。
 小慢事業に継続申請しなかった理由は、その理由が記載されていた1764人中、疾患の対象基準外614人(34.8%)、年齢が対象外378人(21.4%)等、制度そのものによる理由が 56.2%と比較的多かった。次いで転院365人(20.7%)、乳幼児医療費助成制度など他の医療費助成制度を利用64人(3.6%)、親の希望30人(1.7%)等、家族の都合による理由が26.0%を占めていた。治癒、寛解、改善など経過が順調になったとの理由は、慢性腎疾患に比較的多かったが、4疾患群全体では 151人(8.6%)であった。未受診、治療を中断し経過が不明との回答は、糖尿病に比較的多かったが、4疾患群全体では132人(7.5%)であった。

D.考察
 今回の調査では、全体として回収率、有効回答率ともに60%以上となったことは、全国の医療機関関係者の協力のおかげである。また、同時に小慢事業に登録されなくなった症例の経過を把握することの大切さ、関心の高さを示している。
 非継続となった理由として、制度上の理由 56.2%、家族の都合26.0%、経過が順調8.6%を合わせると90.8%であり、小慢事業が医療費助成制度としてほぼ適正に運営されていることを示している。問題となる可能性のある未受診等の理由は、全体としては7.5%と少なかった。
 18年度非継続であったものの、今回の調査で小慢事業に申請していた症例は、慢性消化器疾患以外は20%前後であり、昨年度の20.8%とほぼ同割合であった5)。また、疾患名の変更は、当然予想されるネフローゼ症候群や腎炎、慢性腎不全等以外では少なく、電子データ上の多くの疾患名は正確なものと考えられる。
 全国79/99の実施主体に登録された症例から60.1%の有効回答を得られたので、全国の症例の約半数を把握した結果である。その結果は、疾患群によって異なっていたので、以下、疾患群ごとに考察する。

1,慢性腎疾患
 慢性腎疾患全体として、継続例と比べて非継続例は、ネフローゼ症候群、尿路の奇形、紫斑病性腎炎、IgA腎症等の病理診断名による慢性糸球体腎炎、水腎症等によって「治癒」「寛解」例が多く、逆に「再発」はネフローゼ症候群によって少なかった。また、小慢事業に申請しなかった理由は、法制化による対象基準外による症例が57.8%を占めていた。非継続例の経過や実態を把握する結果として、今回の調査結果は妥当なものであり、今後の小慢事業をどのように運営するのが良いのか貴重な資料になると考えられる。
 平成18年の人口動態統計によれば、慢性腎疾患による1〜19歳児の死亡は9人であった7)。0歳児の多くは未熟児養育医療や乳幼児医療費助成制度による医療費助成が多く行われており、また、今回の調査結果で1歳以下の死亡例がいなかったので、省いた人数である。今回の調査では、全国ほぼ半数の地域から約2年間分の報告により7名の死亡例の報告を得られた。したがって、9人とほぼ同人数の結果であり、慢性腎疾患のある子どもの死亡に至る経過を全国レベルで把握できたと考えられる。
 人口動態統計によれば、子どもの死因として自殺は、10〜14歳が第3位、15〜19歳が第2位であり7)、何らかの障害や疾病をかかえながら学校や家庭での問題をきっかけに自殺に追い込まれる子どもが多い。慢性腎疾患の死亡例の経過では、詳細不明のまま急に亡くなった13歳以上の患児が数人報告されたので、今後の対策が急務である。

2, 慢性呼吸器疾患
 継続例と比べて非継続例は、気管支喘息、慢性肺疾患、気管狭窄ともに「治癒」「寛解」「軽快」が多く、「不変」が少なく、「悪化」が見られなかった。また、小慢事業に申請しなかった理由は、対象基準外による症例が60.4%を占め、非継続例の経過や実態を把握している結果と考えられる。
 平成18年の人口動態統計によれば、慢性呼吸器疾患による1〜19歳児の死亡は28人であった7)。慢性肺疾患等では、一般的に新生児期より未熟児養育医療による医療費助成が行われているので、0歳児は省いた人数である。今回の21名の死亡例の報告は、人口動態統計と近似しており、慢性呼吸器疾患のある子どもの死亡に至る経過を全国レベルで把握できたと考えられる。
 慢性肺疾患に伴って病状が急変したり、気管支喘息等を合併して亡くなる患児の経過が報告されたので、それらの状況の改善が望まれる。また、気管狭窄や先天性中枢性低換気症候群の死亡経過にも配慮しなければならない。

3, 糖尿病
 糖尿病症例の非継続の理由は、年齢が対象外、転院、転科を合わせて318人(76.4%)と多かった。インスリン療法の継続が必要な1型糖尿病は、継続例の3884人に比べて非継続例は439人であり、その割合が少なかった。 20歳までは小慢事業で良く登録、管理されていると考えられる。
 しかし、2型糖尿病は、継続例数に比べて非継続例数が比較的多く、しかも、経過が不明との回答が44.8%と比較的多かった。これらのことは、対象基準が設定されたため、小慢事業での管理が不十分になっていることを示している。小慢事業の対象基準等、改善が望まれる。
 平成18年の人口動態統計によれば、糖尿病による1〜19歳児の死亡は6人であったにもかかわらず7)、今回の調査で1人しか経過が判明しなかった。適切な管理がされていない 2型糖尿病の患児が亡くなっている可能性があるので、今後の対策が必要である。

4, 慢性消化器疾患
 今回の調査で死亡症例が最も多かった胆道閉鎖症を含む慢性消化器疾患は、法制化に伴って新たに区分された疾患群である。18年度非継続とされながら20年度小慢事業に申請したとの回答は47.2%であり、他の疾患群に比べて多かった。胆道閉鎖症など非継続例の割合は少ないものの、たとえ一旦経過が改善して非継続となっても、また悪化しうることを示している。
 新たに対象として追加された進行性家族性胆汁うっ滞症と肝硬変の非継続症例の死亡割合は33.3%と多く、これらを追加した治療研究事業としての今後の成果が問われる。
 平成18年の人口動態統計によれば、肝疾患による0〜19歳児の死亡は27人であった7)。今回の慢性消化器疾患で亡くなった患児は肝疾患のみ0歳児を含む17人であったが、それに相当する人数である。肝疾患のある子どもの死亡に至る経過を全国レベルで把握できたと考えられる。
 胆道閉鎖症の死亡までの経過は、患児によって様々であった。小児医療の進歩に伴い、悪性新生物や先天性心奇形を除けば、1歳以降、慢性疾患で亡くなる子どもは非常に少なくなっている8)。したがって、1か所の医療機関で同じような経過をたどって亡くなる慢性疾患児を経験することが少なくなっている。そこで、死亡症例をその後の医療に生かすことが難しい。今回の調査では、全国レベルでその状況を把握できたので、今後の小児医療の現場で役立つ資料となることが期待される。

E.結論
1)小慢事業に登録されなくなった症例の経過を把握することの大切さが今回の調査で示され、小慢事業が医療費助成制度としてほぼ適正に運営されていることが確認された。今回調査できなかった疾患群に関しては、来年度同様の調査を行いたい。
2)慢性腎疾患、慢性呼吸器疾患、慢性消化器疾患での死亡症例の報告数は、人口動態統計での死亡数と近似していた。これらの疾患群は、今回の調査で非継続症例の経過を全国レベルで把握できたと考えられる。
3)46人の死亡症例の報告があり、発症から死亡に至る経過が判明した。その経過を少しでも回避できるような医療、また生活指導が望まれる。例えば、詳細不明のまま急に亡くなった13歳以降の小慢事業対象患児に対しては、自殺防止等へ対策が急務である。
4)法制化に伴って新たに小慢事業対象となった慢性肺疾患、気管狭窄、先天性中枢性低換気症候群、進行性家族性胆汁うっ滞症、肝硬変等では、非継続症例として死亡症例の報告が見られた。法制化に伴う事業の見直しが適正であったことを示すと同時に、今後の適切な対応が望まれる。
5)2型糖尿病に関する小慢事業での管理が不十分なことが明らかとなり、今後の対策が必要である。

謝辞
 研究にご協力いただいた患児家族、厚生労働省や地方自治体の担当者、そして医療機関、ことに死亡症例をご報告いただいた担当医師に深謝いたします。

資料
1)加藤忠明、柳澤正義、神谷斉、他:小児慢性特定疾患登録管理の試行(U).平成9年度厚生省心身障害研究「小児慢性特定疾患治療研究事業の評価に関する研究」報告書;8〜24、1998
2)加藤忠明、柳澤正義、顧艶紅、他:小児慢性特定疾患治療研究事業での非継続症例の経過に関するパイロット研究.平成18年度厚生労働科学研究「小児慢性特定疾患治療研究事業の登録・管理・評価・情報提供に関する研究」報告書;79〜84、2007
3)加藤忠明、原田正平、掛江直子、他:小児慢性特定疾患治療研究事業を利活用した小児慢性疾患に関するデータべース構築のあり方(2).平成18年度厚生労働科学研究「安全・安心な母子保健医療提供体制整備のための総合研究」報告書;14〜19、2007
4)加藤忠明、原田正平、掛江直子、他:小児慢性特定疾患治療研究事業(先天性代謝異常、および神経・筋疾患)における非継続症例の経過に関する実態調査.小児科臨床61(5);1063〜1069、2008
5)加藤忠明、原田正平、掛江直子、他:小児慢性特定疾患治療研究事業を利活用した小児慢性疾患に関するデータべース構築のあり方(3).平成19年度厚生労働科学研究「安全・安心な母子保健医療提供体制整備のための総合研究」報告書;123〜128、2008
6)原田正平:症例情報データベースシステム基本仕様書.平成17年度厚生労働科学研究「子どもの病気に関する包括的データベースの構築とその利用に関する研究」:13-51、2006
7)厚生労働省統計情報部:平成18年人口動態統計下巻、2008
8)加藤忠明:近年の保健・医療の進歩と小児保健の課題.小児保健研究67(5):701〜 705、2008


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