アレルギー免疫用語解説

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ICAM-1

血管内皮細胞や気道粘膜上皮細胞で発現している接着分子.通常は発現が弱いが,炎症時にマクロファージやマスト細胞から分泌されるインターロイキン1やTNFαというサイトカインの作用により発現が増強する.発現が増強すると好酸球や好中球などの白血球は血管を通り抜け,より多く組織に移行するようになるほか,より多く気道粘膜で顆粒蛋白を放出し,組織を破壊するようになる.

 

IgE抗体

1966年,石坂らによりT型アレルギー反応の原因物質がIgE抗体であることが明らかにされた.以後血液検査によりアレルゲンに対する特異的IgE抗体 を検査することにより,アレルギー反応が関係した疾患かどうか判定できるようになった.喘息や花粉症などアレルギー疾患の多くはIgE抗体依存性である 微量のアレルゲンに対し、IgE抗体をつくりやすい体質(Th2細胞が多い)とつくりにくい体質(Th1細胞が多い)は両極端に分かれるので、100名のIgE抗体の検査値を高い順に並べると2峰性になる.

 

IgE受容体

マクロファージなどに存在する低親和性IgE受容体とマスト細胞・好塩基球などに存在する高親和性IgE受容体がある.ヒトにおける低親和性IgE受容体の病態生理学的な意義は不明な点が多い.ここではIgE受容体とした場合,高親和性IgE受容体を指している.IgE抗体と結合するα鎖,シグナルを細胞内に伝えるβ鎖とγ鎖より構成される.アレルゲンの侵入は2つ以上のIgE受容体同士を結合(架橋)させ,受容体同士が互いに刺激しあい,情報が細胞内に伝わる仕組みになっている.

 

IgG2サブクラス

免疫グロブリンIgGクラスには4種類のサブクラスがある.ほかのサブクラスと異なり,IgG2はインターフェロンγに依存し,IgAやIgEと同様に2歳ころまでは,成人値よりかなり,低い値をとることが多い.副鼻腔炎や肺炎の原因になるインフルエンザ杆菌や肺炎球菌の防御に重要である.

 

アセチルコリン

副交感神経より分泌され,交感神経で分泌されるアドレナリンと拮抗作用をしめす.心臓の脈拍数を減少させ,気管支を収縮させる.気管支喘息患者の気管支では反応性が亢進し,少量のアセチルコリン投与により気管支を収縮する.

 

アトピー

低用量のアレルゲン(通常は蛋白質)に反応してIgE抗体を産生し,喘息,鼻結膜炎,湿疹/皮膚炎などの典型的な症状を発症しやすい個人的または家族性の体質 のことをいう.1923年,Cocaらは魚や花粉などに対して過敏症を示す患者は,遺伝する傾向があることを発見し,非典型的を意味するアトピーと命名した.アトピー性皮膚炎と同義語ではないことに注意.

 

アトピー性皮膚炎

1933年にWiseとSulzbergerによって提唱された疾患概念であり,アトピー体質の人に発症することの多い苔癖化を示す慢性湿疹に対して名づけられた.今日では,T型アレルギーのみならず, 皮膚バリアー機能の低下やW型アレルギー反応も重要な働きを演じていることが判明している.また、現在の診断基準はアトピー体質の有無は絶対条件ではないので,アトピー体質ではない患者でもアトピー性皮膚炎と診断されることがある.

 

アポトーシス

細胞の死には,ネクローシス(細胞破壊)とアポトーシス(プログラム化された細胞死)の2種類がある.ネクローシスでは,酵素などで急激に細胞が破壊されるのに対し,アポトーシスでは何らかのシグナルにより受容体を介して細胞内に情報が伝わり,細胞の中のDNAが自壊して死んでいく.好酸球がネクローシスをおこすと,酵素活性の強い顆粒放出により,さらにほかの細胞のネクローシスを誘導するが,アポトーシスの場合であれば,顆粒を放出せずにマクロファージなどにより処理され静かに死を迎える.

 

アドレナリン

副腎髄質・交感神経で分泌される.エピネフリンともいう.気管支に存在するβ2アドレナリン受容体に選択的に結合するβ2刺激薬が喘息発作治療に使われるほか,エピネフリンもアナフィラキシーの唯一の治療薬である.

 

アナフィラキシー

虫さされや異物の注射などアレルゲンの侵入後,ただちに(食物の場合は1-3時間以内に)出現する,蕁麻疹,嘔吐,血圧低下(血流の減少),喘鳴,呼吸困難(のどの浮腫)などの一連の症状をいう.本態は全身組織の血管性浮腫である.モルモットやマウスではIgG抗体でおこることが多いが,ヒトの場合はIgE抗体による反応である.

 

RSウィルス

直径150-300nmでパラミクソ・ウィルス科に属する.仲間にはパラインフルエンザ・ウィルス(風邪・仮性クループ), ムンプス・ウィルス(耳下腺炎)がある.成人でも風邪の原因になりうるが,特に問題なのは細気管支炎である.非常に喘息と紛らわしい症状を呈することがあるが,多くは急速に進行し,より重篤で,気管支拡張薬がほとんど奏効しない.3歳ころまでは,抗体産生がほとんどおこらず,再感染を繰り返すが,徐々に症状は穏やかになっていく.

 

RNAとmRNA

DNAがRNAに転写されると,必要な部分のみが切り取られ(スプライシング),mRNAとなり,核からリボソームに移行する.チミンTの代わりにウラシルUを使うが,3つの塩基で一つの単位(コドン)を形成する点は同じ.一つのコドン(64通りの組み合わせ)は一つのアミノ酸(20種類)と結合する.リボソームでmRNAのコドンの指示に従って,20種類のアミノ酸が結合し蛋白が完成する.

 

アレルギー

免疫学的機序による過敏症・過敏性反応のこと

 体の中に入ってきた細菌,寄生虫,花粉などの異物(抗原)はマクロファージなどの抗原提示細胞に捕食され,その構成成分の一部がマクロファージの細胞表面に提示される.この提示された抗原に対してT細胞が反応することによって免疫応答が始まる.この免疫応答は,抗体(免疫グロブリン)の産生による抗原の不活化,顆粒球の活性化がおこり異物を攻撃することで始まる.アレルギーとは本来備わっているこの一連の免疫応答が自己にとって不都合な過剰反応をおこす状態をいう.なお,アレルギーをおこす抗原をアレルゲンという.

 

アレルゲン

アレルギーをおこす抗原のこと.通常,分子量5,000以上の蛋白である.水(分子量18),塩(分子量58),糖(分子量180)など低分子物質はアレルゲンにならない.アレルゲン性の強い蛋白はダニやゴキブリの糞,鶏卵中のオボムコイド,スギ花粉,猫,犬,ねずみ,ハムスター,モルモットなどペットの排泄物が知られている.

 

I型-IV型アレルギー反応(クームスの分類)

CoombsとGelが1963年に提唱したアレルギー反応の分類. T型:抗原の侵入に対してIgE抗体が産生され,産生されたIgE抗体がマスト細胞や好塩基球に結合する(感作の成立).この状態で,歳簿度,アレルゲンが侵入すると,数分以内にマスト細胞や好塩基球からヒスタミンなどのメディエーターが遊離され,気管支の収縮や蕁麻疹などさまざまな症状を呈する.即時型アレルギー反応ともいわれる. U型:血液型不適合輸血や重症筋無力症などの自己免疫疾患に関与する反応.自己の細胞膜成分に対するIgGやIgMなどの抗体を介して,炎症細胞や補体の作用により標的細胞の融解がおこる反応. V型:可溶性抗原と抗体が反応し,免疫複合体が形成され,血管壁に沈着し,炎症細胞や補体により攻撃され,おこる反応.SLEなどの膠原病・自己免疫疾患に関係. W型:抗原の再侵入の際に,感作されたT細胞が反応,遊走し,炎症をひき起こす反応.この反応では炎症の成立までに48時間程度の時間を要することが多く,遅延型アレルギー反応とも呼ばれる.接触性皮膚炎(表皮:皮膚の浅いところでおこる)やツベルクリン反応(真皮:皮膚の深いところでおこる)などの病型がある.

 

1秒量とピークフロー

1秒量とは最大努力時に1秒間に吐き出すことのできる空気の量で,ピークフローとは最大努力時に瞬間的に吐き出すことのできる空気の流量(量を時間で割って求める)のこと.喘息などの閉塞性呼吸障害つまり気道狭窄があるときには低下する.1秒量は信頼性が高く過敏性試験,負荷試験など診断に用いられるが,簡易測定装置で測定できるピークフローは日常生活の管理に用いられる.

 

遺伝子多型  

個人個人によって,遺伝子の構造(DNAを構成する4つのヌクレオチドの組み合わせ)は少しずつ異なっている.血液型や髪の毛の色など,ありふれた遺伝子のバリエーションのことを遺伝子多型という.なお,非常に珍しいバリエーションの場合は多型とはいわず変異という.

 

遺伝子発現

DNA配列情報はmRNAに転写,スプライシングされる.必要な場合のみ,必要が部分のみがDNAからmRNAに伝えられることを「遺伝子(mRNA)が発現した」という.遺伝子発現解析の遺伝子とはmRNAのことを意味し,遺伝子配列解析といった場合は通常,個人個人のDNAの配列情報,つまり遺伝子多型のことをさす.

 

インターロイキン4

Th2細胞より分泌される代表的なサイトカイン.B細胞に働き,B細胞が分泌する抗体の種類に影響を及ぼす.B細胞はインターロイキン4またはインターロイキン13で刺激しないとIgE抗体をつくらない.そのほかマスト細胞に働き,サイトカインをつくる潜在能力を増大させ,血管内皮細胞に働くとVCAM-1という接着分子を発現させ,好酸球やリンパ球が(好中球ではなく)選択的に血管から組織へと移行する手助けをする.

 

インターロイキン5

Th2細胞やマスト細胞より分泌されるサイトカイン.主として好酸球を刺激し,脱顆粒をおこし,ECPなどの顆粒蛋白を放出させ,ロイコトリエンC4をつくらせる.または,ほかの刺激に対する好酸球の反応性の閾値を下げる.好酸球の親戚の好塩基球にも同様な作用があるが,非常に弱いもので病態的な意義は少ない.インターロイキン3やGM-CSFも同様な作用をもつサイトカインであるがその作用は好酸球以外の細胞にも及ぶ.

 

インターフェロンγ

Th1細胞が分泌する代表的サイトカイン.B細胞がIgE抗体を産生するのを阻害するほか,ウィルス,真菌(カビ類),結核菌などを攻撃するキラーT細胞やマクロファージなどの細胞性免疫能を増大させる.インターフェロンγの分泌が低下しているとツベルクリン反応は出現しない.免疫グロブリンIgGの中のサブクラスIgG2も増加させる.Th1細胞がインターフェロンγをつくるためにはマクロファージなどの抗原提示細胞から分泌されるインターロイキン12が必要.インターロイキン12がつくられるには,細菌毒素や細菌残渣DNA断片CpGモチーフが必要.

 

運動誘発喘息

気管支喘息患者は気道過敏性が亢進しているため,冬に長距離を走ることにより発作をおこすことが多い.また,きわめて微量のヒスタミン,アセチルコリンあるいは生理的食塩水(0.9%NaCl水)よりも低濃度,高濃度の食塩水の吸入により気管支収縮をおこすことも知られている.運動誘発喘息の原因の一つは乾燥した空気の条件下で長距離を走ると気道分泌液の塩濃度が,上昇しマスト細胞がヒスタミンを遊離するためであると推定されている.また,冷たい空気の存在下で,神経ペプチドが遊離されマスト細胞の脱顆粒をおこすのではないかとも想像されている.

 

Eotaxin

好酸球に対する最も強力な遊走因子.MCP-1, RANTES,MIP-1αなどのCCケモカインの一つ. 線維芽細胞や気道上皮細胞を,インターロイキン4などのサイトカインで刺激すると産生される.

 

ACTH 副腎皮質刺激ホルモン

脳の真ん中にある視床下部より分泌され,副腎皮質に作用し,糖質コルチコイド(副腎皮質ステロイド・ホルモン)の分泌を刺激する.炎症などの肉体的ストレスがかかると分泌され,副腎皮質ステロイドの作用により鎮静する.

 

炎症

白血球が組織に侵入して,あばれている状態を炎症といい,炎症をおこしている白血球を炎症細胞という.

 

エンドルフィン

内因性モルヒネのこと.視床下部に存在するACTHと同じ前駆物質より合成され,主に精神的ストレスにより分泌される.精神的に高揚させ恍惚感が得られるほか,がん細胞やウィルス感染細胞の初回感染時における効果細胞であるナチュラル・キラー細胞を活性化させる.

 

黄色ブドウ球菌

黄色ブドウ球菌の名前の由来は黄色の外観で,顕微鏡で見るとブドウの房のように連なって見えることに由来する.鼻腔などに常在する.健常皮膚には存在しないが,ほとんどのアトピー性皮膚炎皮膚には常在する.膿痂疹では黄色ブドウ球菌が異常に増殖し,スーパー抗原などを放出して強い炎症をおこすが,常在している場合,増殖も減少もせずに,バランスを保ちながら存在し続ける.この場合,黄色ブドウ球菌の関与は,特異的IgE抗体を介したものであろう.アトピー性皮膚炎皮膚で常在する理由については不明.

 

か行

過敏症・過敏反応

正常被験者には耐えられる一定量の刺激への曝露により客観的に再現可能な症状または徴候を引き起こす疾患・反応をいう

 

気道の過敏性

正常の場合に比較して低濃度のアセチルコリンやヒスタミンによって気管支が収縮する場合,気道が過敏である,または気道過敏性が亢進しているという.気道とは鼻腔から毛細気管支を含めた用語であるが,この場合,気管支と考えてよい.メカニズムとしては,バリアー機能の低下,神経ペプチド分泌能亢進,平滑筋受容体の増加などが考えられている.

 

好酸球顆粒蛋白 好酸球の顆粒の中にはアルギニンやリジンを多く含む塩基性の蛋白がつまっている.そのため酸性色素により強く染色される.代表的な塩基性蛋白としてmajor basic protein (MBP),eosinophil cationic protein (ECP)がある.いずれも,寄生虫や気道上皮粘膜などを強く傷害する作用がある.後者は好酸球が活性化されているかどうかの検査としてしばしば用いられる.

 

抗アレルギー薬

最初に開発されたクロモグリク酸ナトリウムは薬草有効成分を参考に前投与することにより喘息発作を予防できる成分を目標に同定された.この薬剤が,たまたまラット(マスト細胞が多い動物)のマスト細胞の脱顆粒を抑制したことから,マスト細胞の安定化と喘息発作予防がクローズアップされ,同様な効果をもつ薬剤が,特に生薬研究が進んでいた日本で,次々と開発され,抗アレルギー薬として名付けられた.したがって,マスト細胞安定薬ともいわれることが多い.しかし,最近の研究では,マスト細胞とは無関係と思われる風邪症状の改善でも効果があること,ヒト・マスト細胞に対する脱顆粒抑制作用はあまり強力ではないことが判明している.

 

好塩基球

白血球全体の0.5%をしめる.標本を染色すると塩基性色素によく染まる顆粒をもつことが名前の由来(好酸球は酸性色素によく染まる顆粒をもつ).好塩基性顆粒,IgE抗体で感作後,アレルゲン刺激で脱顆粒をおこし,ヒスタミンを遊離する細胞はマスト細胞と好塩基球の2種類のみである.マスト細胞と好塩基球は機能・形態は似ていても起源は異なり,好塩基球は好酸球と近縁である.マスト細胞の役割分担は全身臓器の組織中に固着し,アレルゲンの侵入を待つのに対し,好塩基球は血液中を巡回し,炎症がおきた場所に引き寄せられ,マスト細胞の役割を補佐する.

 

好酸球

白血球は顆粒球とリンパ球,単球に大別される.顆粒球には好中球,好酸球,好塩基球の3種類がある.好酸球は,寄生虫感染やアレルギー疾患で増加する.増殖・活性化因子はインターロイキン3と5およびGM-CSFというサイトカインである.これらの因子は好塩基球の増殖・活性化因子でもあるので,好塩基球の数は10分の1であるが,好酸球と同時に増減することが多い.

 

好中球

血液中に最も多く存在する顆粒球である.白血球全体の6割をしめる.単球・マクロファージとともに,細菌の侵入に対して最も有効な武器である.とくにIgG抗体,IgM抗体と結合した抗原は効率的に処理する.

 

抗原提示細胞とマクロファージ

血液中の白血球の約5%をしめる単球は,組織に入って成熟し,マクロファージ,樹状細胞,ランゲルハンス細胞に分化する.いずれも,抗原を貪食し,その情報を細胞膜表面に提示し,T細胞が抗原を認識する手伝いをする細胞である.マクロファージは抗原など異物を激しく貪食しまくるのに対し,ランゲルハンス細胞(皮膚の浅い場所,表皮にのみ存在)と樹状細胞は貪食能が弱く,ほとんど抗原提示専門(プロフェッショナル)である.

 

さ行

サイクリックAMP

アドレナリンやβ2刺激薬が受容体と結合するとATPよりサイクリックAMPが生成される.サイクリックAMPは蛋白キナーゼAに作用して,細胞機能を調節する.気管支の場合,拡張がおこる.テオフィリンはサイクリックAMPの分解を促進するホスホジエステラーゼを阻害することにより,サイクリックAMPの濃度を上昇させ薬理作用を発揮するというように説明されているが,実際の薬理学的効果が見られる濃度では細胞内サイクリックAMPは増加しないという意見もある.

 

サイトカイン

T細胞や抗原提示細胞,マスト細胞,組織構成細胞より分泌され,ほかの白血球,炎症細胞の機能を調節する蛋白分子.ホルモンとは異なり臓器を越えて作用することはなく,炎症局所で働くことが多い.白血球の遊走(ケモタキシス)に関係し,構造的に類似性の高い一群のサイトカインを特に,ケモカインという場合がある.

 

細胞性免疫反応

CoombsのT−V型アレルギー反応のように,免疫グロブリンにより抗原を認識することによりおこる液性免疫反応に対し,W型アレルギー反応のように免疫グロブリンを介さず,直接T細胞により抗原を処理する反応を細胞性免疫反応という.標的はウィルスや結核菌,真菌などである.Th1細胞由来のインターフェロンγやインターロイキン12により活性化される.

 

自己抗体

B細胞より産生される免疫グロブリン,抗体は自己の成分を攻撃することはない(免疫寛容).これは胸腺において自己と反応するT細胞が発達段階で死滅するからである.ところが,ときにこの自己に対する免疫寛容が破綻することがあり,自己の白血球のDNAや甲状腺に対して抗体がつくられたりして,自己免疫疾患をひきおこすことがある(前者はSLE, V型アレルギー反応,後者は橋本氏病,U型アレルギー反応).

 

神経ペプチド

神経末端より分泌されるペプチド(小さな蛋白)のことで,サブスタンスP,ニューロキニンAなどマスト細胞の脱顆粒や気管支平滑筋のヒスタミンやアドレナリン受容体などの調節を介して,炎症を増強するものが多い.皮膚のかゆみや気道過敏性に重要な働きを演じている.

 

スーパー抗原

黄色ブドウ球菌などの細菌由来で,T細胞受容体と強い親和性をもち抗原なしにT細胞を増殖,活性化することができる.ダニなどの特異的抗原で刺激して活性化されるT細胞は全体の0.01%以下であるが,スーパー抗原が関与する病気ではT細胞全体の20%も活性化されることがある.また,スーパー抗原は遅延型反応をおこすTh1細胞,IgE抗体産生を誘導するTh2細胞のいずれをも活性化する.

 

接触性皮膚炎

遅延型(W型)アレルギー反応の一つ.ツベルクリン反応が真皮(深い部位)でおこるのに対し,表皮(浅い部位)でおこる.したがって,ランゲルハンス細胞による抗原提示が重要である.ニッケルなどの金属による皮膚炎がよく知られている.アトピー性皮膚炎の診断の際に除外すべき疾患の一つであるが,成人アトピー性皮膚炎では,洗剤に含まれる化合物などで,接触性皮膚炎が全身におこっている可能性も考えられている.

 

接着分子

白血球が血液から組織に移行するためには血管内皮細胞に接着し,通り抜け,遊走(ケモタキシス)しなくてはならない.種々の局面で接着分子は細胞機能を修飾するが,特に,組織への移行に関して接着分子の役割は非常に大きい.非特異的な炎症のときに分泌されるサイトカイン,TNFαやインターロイキン1が作用すると血管内皮細胞は表面に接着分子ICAM-1を出す.しかし,アレルギー炎症のときに分泌されるサイトカインインターロイキン4と13は血管内皮細胞にVCAM-1を発現させる.好中球はICAM-1と接着できるが,VCAM-1とは接着できない.

 

前駆細胞

血球やマスト細胞は骨髄に存在する造血幹細胞が増殖・分化・成熟をしてつくられる.造血幹細胞はすべての血球に分化する能力(多分化能)をもつが,各血球に分化する段階で,好酸球やマスト細胞など各血球にのみ分化する能力しかもたない未熟な増殖能力をもつ細胞が生成され,骨髄などに存在している.これを前駆細胞という.

 

た行

ダニ抗原Der 1

同じくらいの大きさの蛋白分子(抗原)であっても,免疫系を刺激して特異的IgE抗体をつくりやすい構造(アレルゲン性が強いという)とそうでない構造が存在する.ダニの腸管由来で糞に含まれるDer 1 (1-10まで,構造が解明されている)もアレルゲン性の強い蛋白の一つである.ヤケヒョウヒ・ダニ由来のDer p 1とコナヒョウヒ・ダニ由来のDer f 1があるが,構造的に近似しており,反応性も共通しているので,ここではDer 1として記載する.

 

遅発反応

即時型アレルギー反応が終わった後数時間で,同じ部位に,同様な反応がおこることがある.この反応をT型アレルギー反応の遅発相,または遅発反応という.Th2細胞が優位の反応であり,Th1細胞が優位であるCoombsの分類の遅延型(W型)アレルギー反応とは異なるメカニズムによる.

 

Th1細胞とTh2細胞

免疫反応をコントロールする2種類の拮抗的なヘルパーT細胞(1型がTh1細胞,2型がTh2細胞)のこと.アレルギー患者では,Th2細胞が増殖しており,インターロイキン4や10の作用でTh1細胞の増殖が抑制される.また,乳児期にTh1細胞が増殖するとインターロイキン12やインターフェロンγの作用により, 成人になってもTh2細胞の増殖は抑制される.100人採血し,特異的IgE抗体を測定すると高値群と低値群の2つのグループに分かれるのは,Th1細胞とTh2細胞の拮抗作用による.

 

T細胞

胸腺Thymus由来のリンパ球をT細胞という.免疫反応をコントロールするヘルパーT細胞のほか,細胞性免疫系の中心としてウィルス感染細胞やがん細胞などを攻撃するキラーT細胞,免疫抑制作用をもつサプレッサーT細胞がある.胸腺は,乳児期に最大になり以後縮小する.したがって,そのころまでにTh1細胞・Th2細胞バランスなどの免疫系の体質が決定される.

 

DNA デオキシリボ核酸

リン酸,糖,塩基の単位(ヌクレオチドという)よりなる.一本鎖DNAはリン酸を介して糖鎖を形成する.塩基はアデニンA,チミンT,グアニンG,シトシンCの4つである.AはTのみと結合し,GはCのみと結合し,DNAの2重らせんが形成される.一つのヒト細胞の核に存在する塩基対は60億である.ヒトの遺伝子は約10万であるが遺伝子はプロモーター,イントロン,エクソンより構成される.エクソンのみがmRNAへ転写され,蛋白に翻訳される.

 

DNAチップ

スライドグラスまたは1.2cm四方のガラス板上に,数千―数万種類の遺伝子を同定できるプローブが埋め込まれた装置.プローブとして20塩基の小さなヌクレオチドを一つの遺伝子あたり,数十個使用するのがAffimetrix社で開発されたGeneChip.プローブとしてcDNA(mRNAを逆転写して裏返しのコピーをとったもの)を使うのがStanford型のcDNAマイクロアレイ.DNAチップとは,この2つの機器の合成語である.遺伝子発現(mRNAの定量)をスクリーニングする装置のほか,遺伝子DNA配列解析(SNP解析)を行う装置も登場している.

 

テオフィリン

キサンチン系薬剤ともいう.β2刺激薬と並ぶ代表的な喘息発作治療薬.作用は気管支平滑筋におけるサイクリックAMPの分解を阻止する作用(ホスホジエステラーゼ阻害)により,サイクリックAMPに依存する酵素活性化を経て気管支を拡張させることが推測されていたが,最近,好中球や好酸球のアデノシン受容体を遮断して,これらの細胞の寿命を短くして炎症を抑える効果が指摘されている.

 

転写とスプライシング

4種類の塩基が3つずつ組になったDNA配列情報はRNAにGはC,CはG,AはU,TはAというように伝えられる.これを転写という.そして,遺伝子配列情報のイントロン部分が切り取られエクソンのみがmRNAに伝えられる.これをスプライシングという.いつ,どこで,どのような遺伝子がmRNAとして発現するのかという情報は,遺伝子DNAのプロモーター配列に記されている.このようにして必要な場合のみ,必要が部分のみが蛋白となる機能を発揮する.

 

な行

ナチュラル・キラー (NK)細胞

がん細胞やウィルス感染細胞の初回感染時における最も重要な効果細胞である.なお,初回細菌感染にはマクロファージや好中球,2回目以降の感染には免疫グロブリンが主役である.エンドルフィンによっても活性化されるが主に,インターフェロンγやインターロイキン12などのTh1細胞系のサイトカインによって活性化される.

 

ヌクレオチド

DNAやRNAを形成する最小単位.塩基,糖,リン酸よりなる.DNAでは,ヌクレオチドはアデニンA,チミンT,グアニンG,シトシンCの4種類の塩基をもつ.RNAではチミンのかわりにウラシルUが使われる.AはT(U), GはCとのみ結合する.

 

は行

ハプテン

ペニシリンなどの低分子の物質は免疫系が認識できないため免疫アレルギー反応は通常おこらない.しかし,自己の蛋白と結合した場合,新しい蛋白の侵入として扱われる場合がある.蛋白と結合することにより免疫応答をおこす物質をハプテンという.ハプテンとなりやすい分子はペニシリン系抗生物質のほかに一部の抗炎症薬,ニッケルなどの金属,一部の食品色素添加物などがある.

 

ヒスタミン

マスト細胞と好塩基球の顆粒内に蓄えられている低分子アミン類の一つ.ヒスチジンというアミノ酸の酸の部分がはずれるとヒスタミンというアミンができる.アレルゲンの侵入で顆粒と一緒に放出されると血管や平滑筋のヒスタミン受容体と結合し,即時型アレルギーをおこす.

 

B細胞

魚類以上の高等動物にのみ存在する,最も効率的な免疫装置である抗体を産生する細胞.鳥類ではBursa器官で成熟するためB細胞と命名された.ほ乳類では骨髄で育ち,リンパ節で成熟を完成し,形質細胞となる.常に抗体遺伝子を組み替え,様々な抗原の侵入に対し準備しているが,抗原の侵入があると,抗原に特異的な1種類の抗体(モノクローナル抗体)のみを産生するB細胞が激しく分裂増殖する.また,そのとき,ヘルパーT細胞より分泌されるサイトカインの影響を受けて,IgE抗体,IgG抗体などのクラスが決定される.

 

副腎皮質

左右の腰に存在する腎臓の上に位置する副腎は髄質と皮質に分かれ,それぞれ異なるホルモンを分泌する.髄質では気管支や血管収縮作用をもつアドレナリン(エピネフレリン)が,皮質では抗炎症作用をもつ糖質コルチコイド(副腎皮質ステロイド・ホルモン)が分泌される.ステロイド・ホルモン受容体は通常と異なり,細胞内に存在し,その作用も遺伝子転写(DNAからmRNAへの読みとり)にまで影響する点でユニークである.

 

プロスタグランディン

細胞膜アラキドン酸は刺激を受けると,ロイコトリエンやプロスタグランディンに変化し,細胞外へ放出される.これらを脂質メディエーターという.リポキシゲナーゼの作用が強いとロイコトリエンが,シクロオキシゲナーゼの作用が強いとプロスタグランディンがつくられる.脳の発熱中枢ではインターロイキン6刺激によりプロスタグランディンがつくられ発熱が開始されるほか,関節痛や頭痛の原因になる.アスピリンなど多くの解熱鎮痛剤はシクロオキシゲナーゼの作用を抑制する.

 

β2刺激薬

副腎髄質・交感神経で分泌されるアドレナリン(エピネフリン)にはα(末梢血管),β1(心臓),β2(気管支)などの受容体がある.β刺激薬はβ1にもβ2にも作用するので,気管支の拡張効果のほかに心臓に作用して脈拍数を増加させる.β1の作用を極力抑えて,β2に選択性をもたせた薬剤がβ2刺激薬である.選択性はあるとはいえ,副作用としては乱用(とくにポケット・ネブライザーで生じやすい)した場合,心臓にも影響がある.長期的には気道過敏性を亢進させるとの報告があるが,炎症治療薬ではないので,炎症を放置し,症状だけを緩和させたという設定条件も影響した結果であると思われる.

 

翻訳

リボソームでmRNAの3つずつの塩基組み合わせ(コドン,64通りの組み合わせ)は20種類あるうちの一つのアミノ酸と結合する. このようにmRNAの情報をもとにアミノ酸から蛋白が組み立てられていくことを翻訳という.ゲノム 1個の細胞(=1つの生物)がもつすべての遺伝子情報,DNA配列情報のことをいう.これに対応する用語として,すべてのmRNA発現情報をトランスクリプトーム(transcriptionとは転写のこと),すべての蛋白発現情報をプロテオームという.

 

ま行

マスト細胞

顕微鏡でみると顆粒がぎっしり詰まっているのでマスト(ドイツ語で肥満の意味)細胞と名付けられた.日本語で肥満細胞ともいうが,肥満とは無関係である.気管支,鼻粘膜,皮膚などのほとんどすべての外界と接触する組織に分布する.IgE抗体と強く結合する受容体(レセプター)をもつ.IgEを結合したマスト細胞がアレルゲンと遭遇すると脱顆粒をおこし,ヒスタミンなどのメディエーターを遊離する.以上の機能をもつのはマスト細胞のほか,好塩基球という白血球のみである.

 

免疫グロブリン

B細胞またはB細胞の成熟型である形質細胞によって産生される.抗体ともよばれる.抗原antigenとは,抗体antibodyと反応する異物として定義される.抗体は特異性をもち,対応する抗原以外のものを攻撃することはほとんどない.なお,言葉の定義と同じで,B細胞は常に抗体遺伝子を組み替え,無数の抗原に対応できる抗体を準備している.抗体には役割分担の異なるIgG, IgA, IgM, IgEの4種類が存在する.IgG抗体は1mlの血液中に13mgも存在し,細菌やウィルス感染細胞に対し働くにに対し.IgE抗体は1ml中に0.01mg以下しか存在しないがマスト細胞と共同し,アレルギー反応をおこす.

 

や行

遊走因子

白血球の遊走(ケモタキシス)をおこす物質.ロイコトリエンC4の仲間のロイコトリエンB4やアラキドン酸由来のPAFなどの脂質遊走因子と分子量1万程度のペプチドよりなるサイトカインの仲間のケモカインに分類される.ケモカインはさらに,構造からCCケモカインとCXCケモカインに分類される.CCケモカインにはeotaxinなど好酸球やリンパ球の遊走に関わるケモカインが多い.

 

ら行

ライノ・ウィルス

鼻風邪の主原因となる.直径20-30nm(ナノメーター)のピコルナ・ウィルス(小さなRNAウィルスの意味)に分類される.仲間にはポリオ・ウィルス(小児まひ), コクサキー・ウィルス(夏風邪・ヘルパンギーナ・手足口病)エコー・ウィルス(夏風邪・無菌性髄膜炎)などがある.夏風邪ウィルスの仲間であるが,接触感染が必要であり,夏休みではなく9月10月に流行のピークがある.100種類以上のライノ・ウィルスが存在する.近年,喘息発作との関連が注目されている.

 

ランゲルハンス細胞

表皮(皮膚の浅い部位)で網の目状に突起を伸ばし癒合して存在する抗原提示細胞.血液中には単球の形で存在する.そのほかの組織に存在する樹状細胞と,機能的にも,形態学的にも類似しているが,若干,表面形質が異なり,また,IgE受容体をもっており,IgE抗体を介してアレルゲンを捕捉し,アレルギー反応を加速することができる.そのほか,薬剤など種々のハプテン抗原情報を提示する.

 

リモデリング

長期間慢性炎症の状態の続いた気管支では1秒率の低下などの気流制限が可逆的ではなくなる傾向がある.この原因として,気道上皮下の基底膜肥厚などのリモデリング(組織再構築)が推測されている.

 

リンパ球

白血球全体の3割強(小児では5割程度)をしめる.形態的に区別はできないが,T細胞とB細胞という全く別系統の細胞に分類される.T細胞は,ヘルパーT細胞(Th1細胞,Th2細胞),キラーT細胞,サプレッサーT細胞などがある.T細胞,B細胞以外の細胞で,リンパ球様の形態を示す細胞としては,ナチュラル・キラー細胞がよく知られている.

 

ロイコトリエン

細胞膜に存在する脂質であるアラキドン酸は抗原やサイトカイン刺激により,ホスホリパーゼA2という酵素の活性化により,ロイコトリエンやプロスタグランディンとなって,細胞外へ放出される.リポキシゲナーゼの作用が強いとロイコトリエンが,シクロオキシゲナーゼの作用が強いとプロスタグランディンがつくられる.マスト細胞や好酸球,好塩基球では,ロイコトリエンのうち,特にC4, D4が多くつくられる.ロイコトリエンC4とD4は気管支に対する作用が最も強力な物質である.

 

斎藤博久:大衆医学選書「小児のアトピー・喘息・皮膚炎の病態生理と診断治療」真興交易医書出版より